【いま注目の「オーラルフレイル」】国が口の健康に力を入れる理由とは?
- 森昭

- 12月7日
- 読了時間: 5分
こんにちは。みなさんは「オーラルフレイル」という言葉を聞いたことがありますか?「オーラル」は「口」、「フレイル」は「よわる・衰える」という意味。つまり、「オーラルフレイル」は、口の機能が少しずつ弱くなっていくことをいいます。たとえば、
食べこぼしが増える
むせやすくなる
硬いものがかみにくくなる
会話が減って声が出にくくなる
といった変化がそのサインです。最近、このオーラルフレイルに**厚生労働省(日本の保健や医療を担当する役所)**が力を入れて取り組んでいます。でも、なぜ今こんなに注目されているのでしょうか?今回は、どうして厚労省がそんなにオーラルフレイル予防に力をいれているかをお伝えします。

■① 健康寿命をのばすために
日本は世界でもっとも高齢化が進んでいる国のひとつです。
「長生きする人」は増えましたが、健康なまま長生きできるかどうかが大きな課題になっています。
そこで厚生労働省が目指しているのが、「健康寿命をのばすこと」。
つまり、介護を必要とせず、元気に生活できる時間を少しでも長くすることです。
令和4年厚労省のデータによれば、健康寿命と平均寿命には約10年に開きがあります。つまり、人生の晩年、介護を必要とする年数が平均で10年ほどあるというのがこのデータで読み取れます。介護に入る前の一番初めの兆候がオーラルフレイルと考えられています。

オーラルフレイルは、体のフレイル(虚弱)のはじまりといわれています。
口の機能が弱ると、食べづらくなったり、栄養がとれなくなったりして、体全体が弱っていく原因になるのです。
だからこそ、早く口の衰えに気づいて対策をすることが、健康寿命をのばすカギになるのです。
ちなみに、オーラルフレイルに力を入れている自治体では、介護費削減につながったというところもあります。詳しくは、ボクの記事『オーラルフレイル予防で介護費削減』をご覧ください。
■② 口の健康が全身の健康に関係しているから口は、食べる・話す・笑う・飲みこむなど、毎日の生活に欠かせない大切な役割をしています。でも、年齢を重ねるとこういった力が少しずつ落ちてきます。すると、
食欲がなくなる → 栄養不足になる
むせやすくなる → 肺に菌が入って病気になる(誤嚥性肺炎など)
声が出にくい → 人との会話が減って、気持ちも落ち込む
といったことが起こり、体も心も元気がなくなってしまうんです。つまり、口の衰えは、体全体の衰えにつながるということ。これがわかってきた今、国は「おくちの健康」にもっと目を向けようとしているんです。
■③ 国の制度に「口のケア」を取り入れている厚生労働省は、国全体でオーラルフレイルに対応するため、健康診断や地域の介護予防プログラムに口の機能チェックを加えるようにしています。たとえば:
高齢者の歯科健診で、「噛む力」「舌の動き」「飲み込む力」などをチェック
地域のサロンや集会で「口の体操(パタカラ体操・あいうべ体操)」などを広める
言語聴覚士(ST)や管理栄養士などと一緒に、多職種で口の機能をサポート
このように、「口から元気にする」取り組みを、国の制度に組み込んで広げているんです。
■④ 医療・介護の専門家がチームで支える仕組みをつくっている今の医療や介護は、1人の専門家だけではなく、たくさんの職種の人たちが連携して支える時代です。
歯科医師:口の中を治療したり、噛み合わせを整えたり
医師:全身の健康をチェック
栄養士:食事の工夫や栄養指導
理学療法士・作業療法士:体の動きやリハビリをサポート
ケアマネージャー:生活全体を調整
厚労省は、こうした「チームで支える仕組み」を全国に広げて、高齢者の生活をまるごと支えることをめざしているのです。その中でも、「口の健康」はとくに大事なスタート地点だと考えられています。
■⑤ 科学的に効果があるとわかってきたからオーラルフレイルについての研究が進んで、「口の衰え」が放っておくと要介護や認知症のリスクが高くなることがわかってきました。逆に言えば、口のトレーニングやケアをしっかり行うことで、健康を守れるということもデータでわかってきたんです。そのため、厚労省は2023年〜2024年にかけて、学会と一緒に「オーラルフレイルのチェック方法」や「統一された診断基準」を整え、全国どこでも同じように支援できるように準備をしています。
■まとめ:未来のために「口の健康」を守る厚生労働省がオーラルフレイルに力を入れる理由をもう一度まとめます。
健康寿命をのばしたいから
口の衰えが体や心の健康に直結しているから
国の制度として口の機能チェックを取り入れているから
多職種で支える仕組みが広がっているから
科学的に効果があると証明されてきたから
私たちが今できることは、「口の元気」を大切にすることを知ること。そして、家族や身近な人の変化にも気づいて、やさしく声をかけることです。「口の健康は、体の健康の入り口」これは、これからの時代を生きる中学生にも知っておいてほしい大切なメッセージです。オーラルフレイル予防の具体的方法は、ボクの記事『オーラフレイルチェックが歯科医院でできるってご存じですか?』をご覧ください。https://note.com/moakirari319/n/n8cec0d4d9b2f


