口腔周囲筋と脳疲労の深い関係
- 森昭

- 1月24日
- 読了時間: 4分
―「顎の緊張」が脳を休ませない理由―
「しっかり寝ているのに頭が重い」「考えるのが億劫」「集中が続かない」
こうした状態は、近年よく脳疲労と呼ばれるようになりました。
一般的には、情報過多やストレス、スマホの使いすぎなどが原因として語られますが、実はもう一つ、あまり注目されていない重要な要素があります。
それが口腔周囲筋(口のまわりの筋肉)です。
一見、脳とは無関係に思える「口元の筋肉」。
しかし、神経・呼吸・姿勢・自律神経という観点から見ると、脳疲労と密接につながっていることが分かってきます。
■ 口腔周囲筋とは何か
口腔周囲筋とは、口のまわりにある筋肉の総称で、主に以下を含みます。

口輪筋(唇を閉じる)
咀嚼筋(噛む:咬筋・側頭筋など)
舌の筋肉
表情筋の一部
これらは「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」など、生命活動と社会活動の両方に関わる重要な筋群です。
そしてこの領域の特徴は、脳と非常に近い神経ネットワークを持っていることです。
■ 三叉神経と脳疲労の関係
口腔周囲筋の多くは三叉神経によって支配されています。
三叉神経は、顔面の感覚や咀嚼運動を司るだけでなく、脳幹と直接つながる太い神経です。
つまり、顎の緊張や噛みしめが続くと、
口腔周囲筋が過剰に働く
三叉神経への刺激が増える
脳幹が常に興奮状態になる
という流れが起こります。
脳幹は「生命維持」と「覚醒レベルの調整」を担う中枢です。
ここが休めない状態になると、私たちは「思考が重い」「脳が疲れている」という感覚を持ちやすくなります。
顎がこっている人が、頭の疲労感や集中力低下を訴えやすいのは、偶然ではありません。
■ 噛みしめは“戦闘モード”の名残
人はストレスを感じると、無意識に歯を食いしばったり、唇を強く閉じたりします。
これは原始的な防御反応であり、身体が「戦う・耐える」状態に入っているサインです。
このとき自律神経は交感神経優位になります。

顎が緊張する
呼吸が浅くなる
脳は警戒モードを解除できない
こうした状態が長く続くと、実際には危険がないにもかかわらず、脳はずっと緊張を解けず、慢性的な脳疲労につながります。
■舌位異常・口呼吸と作業効率
舌位の低下や口唇閉鎖不全は、口呼吸の誘因となる。
口呼吸は酸素摂取効率の低下のみならず、睡眠時の呼吸障害リスクを高め、日中の眠気や注意力低下を招く。
デスクワーク主体の就業者では、
前方頭位姿勢
猫背
画面凝視
といった環境要因が重なり、口腔周囲筋機能の低下が進行しやすい点にも留意が必要である。
■ 呼吸との見逃せない関係
口腔周囲筋の緊張や機能低下は、口呼吸とも深く関係しています。
本来、安静時の呼吸は鼻呼吸が基本です。

しかし、
唇がうまく閉じられない
舌の位置が不安定
顎周りが常に力んでいる
こうした状態があると、無意識に口呼吸になりやすくなります。
口呼吸は呼吸が浅くなりやすく、酸素効率が下がります。
脳は大量の酸素を必要とする器官であるため、わずかな呼吸の質の低下でも、疲労感や集中力低下として現れやすいのです。
■ 姿勢と脳疲労への連鎖
口腔周囲筋は、首・後頭部・肩と筋膜で連結しています。
そのため、顎の緊張は姿勢全体にも影響します。
顎が前に出る
首が固まる
後頭部の筋緊張が高まる
この状態では、脳への血流や自律神経の調整にも悪影響が出やすくなります。
「後頭部が重い」「頭の奥が疲れる」というタイプの脳疲労は、口元や顎の問題が隠れていることも少なくありません。
■ こんなサインがあれば要注意
気づくと上下の歯が触れている
朝起きたとき顎がだるい
集中すると口元が固まる
頭の疲れが抜けにくい
ため息や浅い呼吸が多い
これらが当てはまる場合、脳疲労の背景に口腔周囲筋の緊張が関与している可能性があります。
■ 今日からできるシンプルなセルフケア
特別な道具は必要ありません。
上下の歯を離す 唇は軽く閉じて、歯は触れない状態を意識します。
舌は“軽く”上あごへ 強く押し付けず、自然に触れる程度で十分です。
顎周りをゆるめる エラの部分を指でゆっくり円を描くようにマッサージします。
吐く息を長めに 吸うより吐く時間を長くすることで、副交感神経が働きやすくなります。
わずか1〜2分でも、脳の緊張がスッと抜ける感覚を得られる人は多いです。
◇おわりに
脳疲労は「脳だけの問題」ではありません。
口腔周囲筋という一見地味な存在が、神経・呼吸・姿勢を通して、脳の休息を妨げていることがあります。
もし「何をしても頭が休まらない」と感じているなら、
一度、口元の力を抜くことから始めてみてください。
脳は、意外なほど静かに休み始めてくれるかもしれません。

