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OCA NEWS & JOURNAL

「口を閉じる=歯を合わせる」ではない

11 分前
読了時間: 4分

―― 上下歯着き癖(TCH)という視点


OCAジャーナル|著書『口の中から甦れ』から


「唇を閉じてください」とお願いしたとき、上下の歯まで噛み合わせてしまう方はいませんか?


口を閉じる=歯を合わせる、になっている状態。


代表理事・森昭は、これを「上下歯着き癖(うえしたはつきぐせ)」と呼んでいます。



ベースになっているのは、東京慈恵会医科大学・杉崎正志先生、東京医科歯科大学・木野孔司先生が提唱したTCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)という概念です。本記事では、臨床歯科医師としての森の見解を含め、「上下歯着き癖」という呼び方でご紹介します。




▪️上下の歯は、1日のうち98%以上「離れている」

上下の歯が触れるのは、本来、噛む・話す・飲み込むといった動作の瞬間だけ。

接触時間は1日合計で約20分以内と言われています。1日1,440分のうち約1.4%。つまり、98%以上の時間、上下の歯は離れているのが正常です。

ところが、パソコンやスマートフォンで下を向いて集中しているとき、無意識に歯をコツンと当て続けている人が増えています。1日に合計3時間の接触があれば、それだけで通常の約9日分の力が歯にかかる計算になります。


▪️口の中に残る「サイン」

上下歯着き癖は本人に自覚がないことがほとんど。

そのかわり、口の中にサインが残ります。

  • 咬耗、歯冠のヒビ・破折

  • 楔状欠損(歯と歯ぐきの境目がくさび状に減る)

  • 頬粘膜の圧痕(頬線)

  • 舌縁の歯の圧痕

  • 頬骨の内側(咬筋付近)のこわばり・圧痛

森は、詰め物・かぶせものの脱落、セラミックの破折、義歯の痛みや破折、顎関節の負担など、臨床で出会うさまざまなトラブルの背景に、この癖が関わっていることが多いと感じています。


▪️1問でできるスクリーニング

吉田歯科医院(鳥取市)理事長・吉田渉先生によるチェック方法です。


背筋を伸ばしてもらい、「上下の唇だけ付けてください」と声をかけ、その反応を見ます。


  • すぐに、軽く上下の唇を接触できる

  • 少し考えてから、なんとなく唇を合わせるが、しっくりこない表情をする

  • 何を求められているのかわからず、きょとんとしている


吉田先生によれば、1以外は上下歯着き癖の傾向がある方。歯を離していることが「当たり前」の人は違和感がありませんが、癖のある人は歯を離すことに違和感を覚えるのです。


▪️「いつ」「どんなときに」出るのか

著書では、常に歯を合わせている一次性のタイプ(森の臨床感覚では人口の1割ほど)のほかに、きっかけによって現れる二次性のタイプを挙げています。

作業性――パソコン・スマホ・家事など、一人で黙々と下を向いて集中するとき。

ストレス性――人間関係や身体の痛みなどへの代償として。

歯科的要因――動揺歯や不安定な義歯を、歯の接触で安定させようとして。

「一人で」「黙々と」「集中して」「下を向く」。この4つがそろう場面は、多くの職種の現場にもあるはずです。


▪️改善の基本は「気づく」こと

一般的な改善法として紹介されているのが、行動変容のアプローチです。

まず、自分がどんな場面で歯を合わせているかに気づく。

次に、パソコンのモニターの横などに目印のシールを貼り、目に入るたびに「歯を離す」を繰り返す。

地道ですが、癖を「意識できるもの」に変えていくことが出発点です。

もうひとつ、森が強調しているのが「よく噛む≠つよく噛む」ということ。

子どもの頃から「よく噛んで食べようね」と言われて育つうちに、「よく噛む」が「強く噛みしめる」にすり替わってしまっている人も少なくありません。


▪️それぞれの立場で、気づく

歯科医師・歯科衛生士なら――

頬線や舌の圧痕、楔状欠損を見つけたら、治療とあわせて「日中、歯が触れていませんか?」とひと声を。

トレーナー・指導者なら――

フォーム練習や集中している場面で、奥歯を噛みしめていないか。顎まわりの力みは、首や肩の力みにもつながります。

ボイストレーナーなら――

声を出す前の「構え」で、上下の歯が当たっていないか見てみてください。

整体師・セラピストなら――

頬骨の内側や咬筋のこわばりは、デスクワークの姿勢とセットで起きていることがあります。


▪️今日の10秒観察

クライアントや患者さんに「上下の唇だけ、そっと付けてみてください」と声をかけてみましょう。すぐにできるか、少し迷うか、きょとんとするか。その反応だけでも、口の使い方のクセが見えてきます。


本記事は、代表理事・森昭の著書『口の中から甦れ』(日本橋出版)の内容をもとに、OCA事務局が専門職向けに再構成したものです。

監修:森 昭(歯科医師/一般社団法人オーラルコンディショニング協会 代表理事)


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